2026年最初の完全取引週は、金融政策の大分断が鮮明になる重要局面を迎えます。米連邦準備制度理事会(FRB)が労働市場軟化を受けて利下げサイクルを継続する一方、豪準備銀行(RBA)は粘着的なインフレを理由にタカ派姿勢を堅持しています。この政策乖離は豪ドルの構造的上昇要因となりますが、週末に発生したベネズエラでの地政学的衝撃が市場のリスク選好度を試す展開となります。
オセアニア通貨はイールドアドバンテージ(利回り優位性)を武器に上昇基調を維持すると予想されますが、原油価格のボラティリティと日本円の介入リスクが短期的な変動要因として警戒されます。豪ドル円は104円台でキャリートレードの強固な買い支えがある一方、USD/JPYの158円接近は日本当局による為替介入の臨界点となり得ます。
今週の結論まとめ
| 通貨ペア | 週間見通し | 注目材料 | 想定レンジ |
|---|---|---|---|
| 豪ドル円 | 上昇 | RBAタカ派維持・キャリートレード・リスク選好 | 104.00〜106.50円 |
| NZドル円 | レンジ〜やや上昇 | 乳製品価格下落・豪ドル追随 | 89.50〜91.50円 |
| 豪ドル米ドル | 上昇 | 政策乖離・トレンドライン突破 | 0.6620〜0.6750ドル |
| NZドル米ドル | レンジ〜やや上昇 | 米ドル全面安・200日線抵抗 | 0.5735〜0.5815ドル |
今週の共通テーマ(ファンダメンタル)
RBA・RBNZ・FRBの政策スタンス分断
2026年のFX市場を支配するテーマは「The Great Divergence(大分断)」です。主要中央銀行の政策方向性が真逆に分かれる極めて異例な状況が続いています。
米連邦準備制度(FRB)の利下げ継続
FRBは2025年末に3回連続の利下げを実施し、政策金利を3.50〜3.75%まで引き下げました。この背景には、労働市場の明確な悪化があります。11月の非農業部門雇用者数(NFP)は前月比+6.4万人と予想を大幅に下回り、失業率は4.6%と約4年ぶりの高水準に上昇しました。10月には悪天候とストライキの影響で▲10.5万人と大幅減少しており、雇用の基調的な弱さが顕在化しています。
市場はFRBのドットプロット(金利見通し)が示す「2026年1回の利下げ」という慎重姿勢を信じていません。金利先物市場は2回以上の利下げを織り込んでおり、この中央銀行と市場の乖離自体が米ドル安圧力となっています。さらに、トランプ政権が2026年5月に任命する新議長が「大幅利下げ」支持派になるとの観測も、ドル弱気シナリオを後押ししています。
豪準備銀行(RBA)のタカ派ホールド
対照的に、RBAは「最後のタカ派」として孤立しています。2025年Q4の消費者物価指数(CPI)は市場予想とRBA自身の見通しを上回り、コアインフレ率は目標レンジ2〜3%の上限付近で推移しています。
豪州のインフレは米国と異なり、非貿易財サービス(保険、住宅、公共料金)が主導しており、グローバルな金利動向の影響を受けにくい構造的性質を持っています。このため、RBAは2026年上半期の利下げ余地がなく、むしろ市場は政策金利4.35%から3.85%以上への追加利上げの可能性すら織り込み始めています。
この「利下げサイクル vs 高金利維持」という構図は、豪ドルをイールドマグネット(利回り磁石)に変えています。
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)の脆弱性
RBNZは2025年末に政策金利を据え置きましたが、経済ファンダメンタルズは豪州よりも明確に悪化しています。世界乳製品貿易(GDT)価格指数は直近で4.4%下落しており、NZ最大の輸出品である乳製品価格の低迷は国民所得と交易条件の直接的な悪化要因です。
国内成長の鈍化と中国需要の軟調を受け、RBNZは中期的にRBAよりもハト派姿勢を取らざるを得ないと予想されます。このため、NZドルは米ドル全面安局面では上昇しますが、豪ドル対比では劣後する(AUD/NZD上昇)構図が継続します。
米金利動向とリスクオン・オフ
国債利回りスプレッドの決定的な意味
通貨価値の最終的な裁定者は、2026年においては債券市場です。現在の国債利回り構造は、豪ドル優位を明確に示しています。
- 豪10年債 4.82% vs 米10年債 4.20% → +62bpsの豪州優位
- 豪2年債 ~4.10% vs 米2年債 3.49% → +61bpsの豪州優位
この正のスプレッドは、グローバルな債券運用マネージャーに対して、米国債から豪州国債(ACGB)へのリバランスを促す強力なインセンティブとなります。債券購入のために継続的な豪ドル買いフローが発生するため、これは構造的な下支え要因です。
リスクオン環境の維持が鍵
ただし、豪ドルの持続的上昇には「リスクオン」環境が必須条件です。週末のベネズエラでの米軍事介入は、この前提を脅かす地政学リスクとして警戒されます。
現時点では、暗号資産市場の週末反応が限定的だったことから、市場は「事態の封じ込め」シナリオ(外科的作戦が地域を安定化させ、最終的にベネズエラ産原油供給が正常化)を想定していると判断できます。しかし、月曜アジア市場オープン時の原油(ブレント)の値動きが決定的なシグナルとなります。
- シナリオA(封じ込め成功): 原油安定→リスクオン継続→USD下落・AUD上昇
- シナリオB(事態拡大): 原油70ドル突破→株価急落→USD/JPY/CHF上昇(安全逃避)・AUD下落
中国経済と資源価格の影響
ゴールドの歴史的ラリーと豪ドル
金(XAU/USD)は1オンス4,332ドルと、前年比+64%の歴史的上昇を記録しています。これは米ドル減価と地政学不安の同時進行を反映しています。金と豪ドルの相関は歴史的に正であり、金の強さは豪ドルの持続的な追い風となっています。
原油の両刃性
ブレント原油は60.75ドル/バレルと、前年比約20%下落しています。低油価はグローバルなディスインフレ(リスク資産にポジティブ)に寄与しますが、エネルギー輸出国には逆風です。
ただし、ベネズエラショックは価格下限を形成する可能性があります。原油が65〜70ドルへ穏やかに上昇するシナリオでは、エネルギー輸出国である豪州にとってプラスとなり、エネルギー輸入国である日本にはマイナスとなるため、豪ドル円の上昇要因となります。
鉄鉱石の予想外の堅調
鉄鉱石価格は107.17ドル/トンと、弱気な長期予想(94ドル目標)にもかかわらず堅調に推移しています。この水準はBHP、リオ・ティントといった豪州鉱山会社にとって高収益を確保できる価格帯であり、豪州の貿易収支と税収を支えています。
中国の旧正月前の在庫積み増し期間は通常Q1に鉄鉱石価格を支えるため、短期的には豪ドルへのバッファーとなります。
豪ドル円 週間予想
ファンダメンタル分析
豪ドル円は今週、キャリートレードの王様としての地位を確立すると予想されます。この通貨ペアは、豪ドル強気要因(RBAタカ派)と円弱気要因(キャリートレード)というダブルテールウィンド(二重の追い風)を享受しています。
圧倒的なイールドスプレッド
豪州と日本の10年債利回り格差は275bps(2.75%)を超えており、これは歴史的に見ても極めて大きな水準です。日本の政策金利は日本銀行(BOJ)が0.75%へ引き上げたものの、絶対水準では豪州の4.35%と比較して依然として低く、キャリーコスト(円を借りて豪ドル資産を買うコスト)がプラスとなります。
日本の個人投資者(通称「ミセス・ワタナベ」)は、このキャリートレードの積極的な担い手です。円定期預金の金利が0.3%程度である中、豪州国債で4.8%の利回りが得られるのであれば、為替リスクを取ってでも投資する動機は極めて強固です。
リスクオン相場での最大受益者
豪ドル円はS&P500などグローバル株価指数との相関が極めて高い通貨ペアです。ベネズエラ情勢が悪化せず、株式市場が堅調を維持する場合、豪ドル円は106円台を目指す展開となります。
逆に、株価が急落するリスクオフ局面では、キャリートレードの巻き戻し(円買い戻し)が発生し、豪ドル円は急落リスクに晒されます。このため、株価動向の継続的なモニタリングが不可欠です。
テクニカル分析
日足チャート: ブリッシュハンマーの出現
豪ドル円の日足チャートには、104円台でブリッシュハンマー(強気の反転シグナル)が形成されています。これは、104円近辺で強力な買い需要が存在することを示しています。市場参加者は104円を「ソフトフロア(軟性下限)」と認識しており、この水準を割り込む可能性は現時点では低いと判断されます。
サポートレベル
- 104.00円: 構造的な重要サポート。ブリッシュハンマー形成点。キャリートレード勢の買い拠点。
- 102.50円: 月足ピボットS1レベル。ここを割ると調整が深まるシグナル。
- 100.00円: 心理的大台。ここまで下がるにはリスクオフの大規模加速が必要。
レジスタンスレベル
- 105.50円: 直近高値。日足レンジ上限。
- 106.00円: 心理的節目。2025年12月高値圏。突破すれば加速の可能性。
- 107.50円: チャネル上限。年初来高値更新ゾーン。
RSI(相対力指数)の状況
RSIは買われ過ぎ水準(70超)に接近していますが、まだダイバージェンス(価格とRSIの乖離)は発生していません。このため、短期的な調整リスクはあるものの、上昇トレンドの終了は示唆されていません。
今週の売買シナリオ
上昇シナリオ(確率60%)
条件
- ベネズエラ情勢が週明けに沈静化し、原油価格が65ドル以下で安定
- 米国雇用統計(NFP)が予想通り軟調(+5.5万人前後)でドル全面安
- 日本の為替介入が実施されない(USD/JPY 158円未満で推移)
- S&P500が堅調を維持
価格目標
104.50円→105.50円→106.00円
推奨戦略
104.00〜104.30円の押し目で段階的に買い建て。ストップロスは103.50円。第一利益確定目標は105.80円、第二目標は106.30円。
下落シナリオ(確率25%)
条件
- ベネズエラ情勢が拡大し、原油が75ドルを突破(スタグフレーションショック)
- グローバル株式市場が急落(S&P500が5%以上下落)
- 日本政府が為替介入を実施(USD/JPY急落に巻き込まれる)
価格目標
104.00円→102.50円→101.00円
推奨戦略
105.50円超での新規買いは控える。既存ロングポジションは104.80円にトレーリングストップを設定。リスクオフの兆候が明確化した場合、104円割れで損切り。
想定が崩れる条件
上昇シナリオ崩壊のトリガー
- 日本財務省がUSD/JPYに対して大規模介入を実施し、USD/JPYが3〜5円急落した場合、豪ドル円も巻き込まれて急落します。この場合、ファンダメンタルズは無関係に技術的なストップロス連鎖が発生します。
下落シナリオ不発のシグナル
- ベネズエラ関連ニュースで原油が62ドル以下に留まり、月曜のアジア株が堅調な場合、リスクオフシナリオは否定されます。この場合、104円台での買い拾いが正当化されます。
NZドル円 週間予想
ファンダメンタル分析
NZドル円は、豪ドル円の「劣後版」として機能します。オセアニア通貨全体を押し上げる要因(米ドル安・リスクオン)からは恩恵を受けますが、NZ固有のファンダメンタルズは脆弱です。
乳製品価格下落の重し
GDT価格指数の4.4%下落は、NZ経済にとって深刻なマイナス材料です。乳製品はNZの「ブラックゴールド」であり、輸出収入と国民所得に直結します。今週火曜日の次回GDTオークションでさらなる下落があれば、NZドルは独自の売り圧力に晒されます。
RBNZのハト派化リスク
RBNZはRBAに比べて早期にハト派転換を余儀なくされる可能性があり、これは中期的なNZドル弱材料です。
テクニカル分析
サポート
- 89.50円: 主要サポート。需要ゾーン下限。
- 88.00円: 構造的サポート。ここを割ると調整加速。
レジスタンス
- 90.50円: 複数の移動平均線が交差する抵抗帯。
- 91.50円: 直近高値。突破には豪ドル円の106円突破が必要。
戦略
新規ポジションは推奨しません。豪ドル円のほうがリスクリワードが明確に優れています。既存ロングは90.00円で部分利確、89.30円にストップ設定。
豪ドル米ドル 週間予想
ファンダメンタル分析
豪ドル米ドルは、今週最も注目すべき通貨ペアです。ファンダメンタルズ、テクニカル、市場ポジショニングの三要素が完璧に整列しています。
FRBとRBAの政策乖離が最大テーマ
前述の通り、FRBが利下げサイクルにある一方、RBAは「高金利維持」を堅持しています。この政策乖離こそが、豪ドル米ドル上昇の根本的なドライバーです。
金曜日の米雇用統計が決定打となる
12月の米NFPは市場予想+5.5万人と、11月の+6.4万人からさらに悪化する見通しです。もし実績が予想を下回り、+3〜4万人台に留まった場合、「リセッション懸念」が台頭し、FRBの追加利下げ期待が強まります。これは米ドル全面安の強力な触媒となります。
水曜日のADP雇用統計(予想11.5万人)が前哨戦として重要です。ADPが予想を大幅に下回った場合、NFP前倒しでドル売りが加速する可能性があります。
テクニカル分析
歴史的なトレンドライン突破
豪ドル米ドルは、2021年2月高値0.8007から続いていた長期下降トレンドラインを、2025年末に明確に上方ブレイクしました。これは、2年以上続いた弱気相場から強気相場への世俗的トレンド転換を示唆する極めて重要なシグナルです。
レジスタンスレベル
- 0.6727ドル: 2025年12月高値。直近の重要抵抗。
- 0.6800ドル: 心理的節目。
- 0.6940〜0.7000ドル: 2024年9月スイング高値と心理的大台。
- 0.7120ドル: 年間ターゲット。歴史的ボラティリティ(0.63安値から13%レンジ)に基づく投影値。
今週の売買シナリオ
上昇シナリオ(確率70%)
条件
- 米雇用統計が予想通りまたは予想以下の弱い結果
- ISM製造業PMIが50を下回り続ける(月曜発表、予想49.0)
- ベネズエラ情勢が沈静化
- ゴールドが4,300ドル台を維持(リスクオンと米ドル不信の併存)
価格ターゲット
0.6640→0.6727→0.6800
推奨戦略
これは今週最も推奨される戦略です。
0.6620〜0.6640ゾーンでの押し目買いを推奨します。理想的なエントリーは0.6630で、ストップロスは0.6590。第一利益確定目標は0.6720、第二目標は0.6780。
リスクリワード比は1:3以上であり、機関投資家レベルで推奨できる水準です。
ポジションサイズは通常の1.5倍まで増やすことを許容できる、年に数回のセットアップです。
下落シナリオ(確率20%)
条件
- 米雇用統計が予想を大幅に上回る(+15万人超)
- ベネズエラ情勢拡大で原油急騰・株急落のスタグフレーション環境
- 中国の経済指標が予想外に悪化し、資源通貨が連鎖下落
価格ターゲット
0.6605→0.6550→0.6450
対応策
0.6605を明確に下抜けた場合、ブレイクアウト失敗と判断し、全ポジション清算。逆張りでのショートは推奨しません(構造的トレンドに逆らうため)。
レンジシナリオ(確率10%)
週間で0.6600〜0.6700の狭いレンジに留まる可能性は低いですが、もし雇用統計が予想ピッタリで「サプライズなし」の場合、方向感を欠く展開もあり得ます。この場合、レンジ下限買い・上限売りの戦術的取引が有効です。
NZドル米ドル 週間予想
ファンダメンタル分析
NZドル米ドルは、豪ドル米ドルの「フォロワー(追随者)」です。米ドル全面安の恩恵は受けますが、独自の上昇ドライバーに欠けます。
テクニカル分析
200日移動平均線の壁
NZドル米ドルは0.5792〜0.5800の供給ゾーンで抵抗に直面しています。200日移動平均線が0.5802付近に位置しており、抵抗の合流点(confluence)を形成しています。
日足終値ベースで0.5815を明確に上抜けることができれば、強気の走りが始まり0.6000を目指す展開となりますが、現時点ではその確度は判断できません。
サポート
- 0.5735ドル: 需要ゾーン。
- 0.5687ドル: オーバーラップサポート。
RSI中立
RSIは52と中立圏にあり、方向性の欠如を示しています。
戦略
トレードは条件付き
豪ドル米ドルが上昇する場合、NZドル米ドルも引きずられて上昇します。しかし、リスクリワードは豪ドル米ドルに劣るため、限られた資本を投じる場合は豪ドルを優先すべきです。
0.5815の明確な突破を確認してからの順張り買いが安全です。0.5735を下抜けない限りショートは推奨しません。
既存ポジション保有者向け
0.5790で部分利確、0.5720にストップ。0.5820突破で買い増し検討。
今週の重要リスクイベント
| 日付 | 時間(JST) | 通貨 | イベント | 予想 | 前回 | 重要度 | 予想される影響 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月6日(月) | 終日 | USD | ベネズエラ情勢の市場反応 | – | – | ★★★★★ | 原油・ゴールド・リスク資産の方向性を決定。アジア市場オープンの価格形成が鍵。 |
| 1月6日(月) | 0:00 | USD | ISM製造業PMI | 49.0 | 49.7 | ★★★ | 50割れ継続はドル売り材料。予想下回りでドル加速安。 |
| 1月7日(火) | 10:00 | NZD | GDT価格指数 | – | -4.4% | ★★ | さらなる下落はNZドル独自の弱材料。 |
| 1月8日(水) | 22:15 | USD | ADP雇用統計 | 11.5万人 | 6.4万人 | ★★★★ | NFPの前哨戦。予想下回りでドル売り先行。 |
| 1月8日(水) | 0:00 | USD | ISM非製造業PMI | 52.0 | – | ★★★ | サービス業の底堅さを確認。ソフトランディング期待の試金石。 |
| 1月10日(金) | 22:30 | USD | 非農業部門雇用者数(NFP) | +5.5万人 | +6.4万人 | ★★★★★ | 週最大のマーケットムーバー。労働市場軟化確認でドル全面安の引き金。 |
| 1月10日(金) | 22:30 | USD | 失業率 | 4.6% | 4.6% | ★★★ | 上昇(4.7%以上)はリセッション懸念を喚起。 |
時間の注意点: 米国経済指標の発表時刻は、冬時間(EST)のため日本時間22:30または0:00が標準です。
イベント解釈のポイント
月曜日の地政学リスク評価
週明け最初の数時間が最も重要です。ブレント原油が62ドル以下で落ち着けば「封じ込め成功」、65ドル突破なら「緊張継続」、70ドル突破なら「危機モード」と判断できます。同時にビットコインとゴールドの動きも確認してください。ビットコインが安定していればリスクオフは限定的、ゴールドが4,400ドルを突破すれば地政学プレミアムの本格化と解釈できます。
水曜日のADP統計の読み方
ADPは必ずしもNFPと相関しませんが、市場心理への影響は大きいです。予想11.5万人に対して実績が8万人以下なら、NFP発表前にドル売りが加速する可能性があります。逆に15万人を超えれば、ドル一時的反発もあり得ます。ただし、ADP強い→NFP弱いのパターンも頻発するため、ADP好結果でのドル買いは金曜まで持ち越さない方が賢明です。
金曜日のNFP: 市場コンセンサスを超える読み解き
市場予想+5.5万人は、すでに「かなり弱い」水準です。問題は、この弱い予想がどの程度織り込まれているかです。
- 予想通り(+4〜6万人): 米ドル売り継続。豪ドル米ドルは0.6750突破を試す。
- 予想以上に弱い(+2万人以下): リセッション懸念が急浮上し、米株急落の可能性。この場合、リスクオフで豪ドル円が下落する一方、豪ドル米ドルは上昇という複雑な動き。
- 予想外に強い(+10万人超): 市場は「11月が底だった」と解釈し、ドル全面高。豪ドルは調整入り。ただし、この確率は20%以下と評価します。
注目すべき内訳指標
NFPの総数だけでなく、以下の内訳が重要です。
- 民間雇用の内訳: 医療・政府以外のセクター(製造業、運輸、小売)が増えているか。これらが減少継続なら景気循環的な弱さが確認されます。
- 平均時給の伸び: 前月比+0.3%、前年比+3.9%が予想。もし前年比が3.5%を下回れば、インフレ圧力後退→FRB利下げ余地拡大→ドル売り。
- 労働参加率: 低下していれば「諦め失業者」の増加を意味し、実質的な労働市場はさらに悪い。
今週の戦略的ポジショニング: 機関投資家の視点
シナリオ別ポートフォリオ戦略
プロフェッショナルトレーダーは、単一シナリオに賭けるのではなく、複数シナリオに対応できるポートフォリオを構築します。
コアポジション(60%の資金配分)
推奨: 豪ドル米ドル ロング
- エントリー: 0.6630
- ストップロス: 0.6590(60pips, 約0.9%の損失)
- 第一目標: 0.6720(90pips, +1.4%)
- 第二目標: 0.6780(150pips, +2.3%)
- リスクリワード比: 1:2.5
ロジック: ファンダメンタルズ(政策乖離)、テクニカル(トレンド転換)、イベント(弱い雇用統計)の三要素が整合。年初の最高セットアップ。
サテライトポジション(30%の資金配分)
推奨: 豪ドル円 ロング(条件付き)
- エントリー: 104.20(月曜のリスク評価後)
- ストップロス: 103.50
- 目標: 106.00
- 実行条件: 月曜日のアジア市場で原油が63ドル以下、日経平均が+1%以上の上昇を確認してから。
ロジック: キャリートレードとリスクオン環境の二重恩恵。ただし地政学リスクに脆弱なため、コアポジションより小さく。
ヘッジポジション(10%の資金配分)
推奨: ゴールド ロング(XAU/USD)
- エントリー: 4,330ドル
- ストップロス: 4,250ドル
- 目標: 4,500ドル
ロジック: ベネズエラ情勢が拡大した場合の保険。豪ドルポジションが損失を出す環境(リスクオフ)で、ゴールドは利益を出す。ポートフォリオ全体のボラティリティを抑制する役割。
リスク管理の鉄則
1. 日本円介入リスクへの対応
USD/JPYが158.00を突破した場合、日本財務省による為替介入のリスクが急上昇します。介入は通常、流動性の薄い時間帯(東京早朝、ニューヨーク深夜)に実施され、数分で3〜5円の変動を引き起こします。
豪ドル円ポジション保有者の対策:
- USD/JPYが157.50を超えた時点で、豪ドル円のストップロスを建値+0.5円に引き上げる。
- 豪ドル円のポジションサイズを通常の50%に削減し、残りは豪ドル米ドルに振り替える。
- 介入発生時は、パニック売りに巻き込まれず、104円台前半での買い拾いを検討。介入効果は通常48時間以内に減衰します。
2. 地政学イベントへの即応体制
ベネズエラ情勢は週末に発生したばかりであり、週中に予期せぬ展開(報復攻撃、ロシア/中国の軍事介入表明など)が起きる可能性があります。
対応プロトコル:
- 原油(WTI/Brent)とVIX指数(恐怖指数)を1時間ごとにチェック。
- VIXが25を超えた場合、リスク資産ポジションを30%削減。
- 原油が72ドルを突破した場合、豪ドルポジションの50%を利食いまたは損切り。
- ニュース速報アラートを設定(Bloomberg, Reuters, Twitterの信頼できるアナリスト)。
3. ポジションサイジングの科学
プロトレーダーは「確信度」に応じてポジションサイズを調整します。
- 高確信トレード(豪ドル米ドル ロング): 通常の1.5〜2倍のサイズ
- 中確信トレード(豪ドル円 ロング): 通常サイズ
- 低確信トレード(NZドル米ドル): 通常の0.5倍またはスキップ
資金管理の黄金律: 単一トレードでの最大損失は口座資金の2%以内。豪ドル米ドルとの相関が高い豪ドル円を同時保有する場合、合計リスクは3%以内に抑える。
週間テクニカル分析: より深い洞察
豪ドル米ドル: エリオット波動とフィボナッチ分析
エリオット波動カウント
2025年10月の安値0.6340を起点とする上昇は、エリオット波動理論における「第3波」の初期段階にある可能性が高いです。
- 第1波: 0.6340→0.6520(2025年10〜11月)
- 第2波: 0.6520→0.6420(11月調整)
- 第3波(現在): 0.6420→0.7100目標
第3波は通常、第1波の1.618倍の値幅となるため、理論価格は以下の通りです。
計算: 0.6420 + (0.6520 – 0.6340) × 1.618 = 0.6420 + 0.291 = 0.6711
これは今週のレジスタンス0.6727と驚くほど一致しており、テクニカル的な妥当性を補強します。
フィボナッチ・リトレースメント分析
2021年高値0.8007から2024年安値0.6340への下落に対するリトレースメント水準:
- 23.6%戻し: 0.6733 ← 今週の重要抵抗
- 38.2%戻し: 0.6977 ← 中期目標(Q1末)
- 50.0%戻し: 0.7173 ← 年間目標
- 61.8%戻し: 0.7370 ← 2026年下半期目標
現在価格から0.6733までは残り40pips程度であり、今週中の到達は十分に可能です。
豪ドル円: 一目均衡表の雲と転換線
一目均衡表の分析
豪ドル円の日足チャートにおいて、価格は雲(抵抗帯)の上に位置しています。これは強気トレンドの継続を示唆します。
- 基準線: 103.50円(サポート)
- 転換線: 104.80円(短期抵抗)
- 先行スパン1: 105.20円
- 先行スパン2: 103.80円
価格が雲の上にある限り、押し目は買いのチャンスと解釈されます。ただし、雲の下(103.80円以下)に抜けた場合、トレンド反転の可能性が高まります。
遅行スパン(Chikou Span)の確認
遅行スパンが26日前の価格を上回っている限り、上昇トレンドは健全です。現在、この条件は満たされています。
NZドル米ドル: モメンタム欠如の意味
ボリンジャーバンド分析
NZドル米ドルはボリンジャーバンドの中心線(20日移動平均)付近で推移しており、方向感の欠如を示しています。
バンド幅が縮小している(スクイーズ状態)ことから、近い将来に大きな方向性のあるブレイクアウトが発生する可能性があります。ただし、その方向は現時点では予測不能です。
戦略的含意: トレンドフォロワーは様子見が賢明。ブレイクアウトトレーダーは0.5815上抜けまたは0.5735下抜けを待つ。
長期投資家向け: 2026年の構造的見通し
短期トレーダーだけでなく、中長期投資家にとっても重要な洞察を提供します。
豪ドルの2026年年間予測
ベースシナリオ(確率55%): レンジ上昇
- 年間レンジ: 0.6300〜0.7200
- 年末予想: 0.6950
- ドライバー: RBAの高金利維持、Fed利下げ2〜3回、中国の緩やかな回復、資源価格の安定
強気シナリオ(確率25%): トレンド上昇
- 年間レンジ: 0.6500〜0.7500
- 年末予想: 0.7350
- トリガー: 米国リセッション入りでFed大幅利下げ(累計100bps超)、中国の大規模景気刺激策、資源スーパーサイクルの再来
弱気シナリオ(確率20%): 調整継続
- 年間レンジ: 0.6000〜0.6700
- 年末予想: 0.6200
- トリガー: RBAの予想外の利下げ転換、中国経済のハードランディング、グローバルリスクオフの長期化
長期ポートフォリオへの組み入れ戦略
推奨: 豪ドル建て債券への分散投資
日本の個人投資家にとって、豪州国債(ACGBs)または豪ドル建て社債は魅力的な選択肢です。
- 利回り: 4.5〜5.5%(円建て資産の0.3〜0.8%と比較して圧倒的)
- 為替リスク: 0.63〜0.73のレンジを想定した場合、最大15%の変動リスク
- 総合リターン: 保有期間3〜5年で年率6〜8%の期待リターン(為替益含む)
実行方法:
- 投資資金の20〜30%を豪ドル資産に配分
- 為替リスクを平準化するため、6ヶ月〜1年かけて段階的に購入(ドルコスト平均法)
- 0.6300〜0.6500のゾーンで買い増し、0.7200以上では新規購入を控える
注意点: 為替ヘッジをかけると利回りメリットが消失するため、基本的には為替オープン(ヘッジなし)で保有することを推奨します。
クロス通貨戦略: AUD/NZDの注目
オセアニア通貨内での相対価値取引
豪ドルとNZドルは相関が高い(通常0.85以上)ため、両者を同時にロングすることは分散効果が低いです。より洗練された戦略は、豪ドル強気・NZドル中立の見通しを活用したクロス取引です。
AUD/NZD ロング戦略
ファンダメンタルズ根拠:
- RBAはタカ派、RBNZは中立〜ハト派寄り
- 豪州のインフレ粘着性 > NZのインフレ鈍化
- 鉄鉱石価格堅調 vs 乳製品価格軟調
- 豪州経済のレジリエンス > NZ経済の脆弱性
テクニカル状況:
- 現在値: 1.155前後
- サポート: 1.150(心理的節目)
- レジスタンス: 1.165(直近高値)、1.180(年間目標)
推奨戦略:
- エントリー: 1.152〜1.154
- ストップロス: 1.145
- 目標: 1.170(第一)、1.185(第二)
- 保有期間: 1〜3ヶ月
この戦略のメリット:
- 米ドル要因を相殺できる(両通貨とも対米ドルで同方向に動く傾向があるため、クロスでは米ドル変動の影響が小さい)
- ボラティリティが低い(主要通貨対より変動が穏やか)
- スワップポイントがプラス(豪ドル金利 > NZドル金利)
この戦略が適している投資家:
- 中長期の資産形成を目指す投資家
- 為替変動リスクを抑えつつ、オセアニア経済の相対的な強弱から利益を得たい投資家
- スワップポイント収益を重視する投資家
市場心理とポジショニング分析
COTレポート(建玉明細報告)の示唆
米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOTレポート(最新:2025年12月末時点)によれば、投機筋の豪ドルネットロングは過去3ヶ月で大幅に増加しています。
解釈:
- ポジティブ面: 市場参加者の多くが豪ドル上昇を確信している(コンセンサス形成)
- ネガティブ面: ポジションが偏っているため、悪材料が出た場合の巻き戻し(急落)リスクがある
結論: 短期的には過熱感があるものの、ファンダメンタルズが支持する限り、調整は浅く短期間に留まる可能性が高い。むしろ、ショートスクイーズ(ショート勢の買い戻し)によるさらなる上昇の余地があります。
センチメント指標: 投資家心理の読み解き
IG証券の顧客ポジション比率:
- 豪ドル米ドル: ロング70% vs ショート30%
- 解釈: 個人投資家の多くが強気。逆張り指標としては「やや過熱」だが、まだ極端ではない。
Bloomberg調査のアナリスト予想:
- 3ヶ月後の豪ドル米ドル予想中央値: 0.68
- これは現在値から+1.5%程度の上昇を示唆
総合判断: 市場心理は強気に傾いているが、「全員が買った後」の状態ではなく、まだ上値余地がある段階と評価します。
リスクシナリオの深掘り: 「起きてはならない」事態への備え
プロフェッショナルなリスク管理には、低確率だが壊滅的な影響を持つ「テールリスク」への備えが不可欠です。
テールリスク1: 日本政府の為替介入(確率15%)
シナリオ:
USD/JPYが159円を突破した東京早朝5時、日本財務省が5兆円規模の円買いドル売り介入を実施。USD/JPYは10分で154円まで急落。
波及効果:
- 豪ドル円は107円から103円へ▲4円(約▲3.7%)の急落
- 豪ドル米ドルは介入の直接的影響を受けないが、リスクオフ心理で一時的に0.6550まで下落
- 回復には3〜5営業日を要する
対策:
- 介入の兆候(財務官の警告発言、USD/JPY 158.00突破)が出た時点で、豪ドル円ポジションの50%を利食い
- 残りポジションのストップロスを104.50円(損失許容範囲内)に設定
- 介入発生時は慌てて損切りせず、103円台前半での買い戻しを検討(介入効果は一時的)
テールリスク2: 中国発のシステミック危機(確率10%)
シナリオ:
中国の大手不動産開発会社が予想外のデフォルト(債務不履行)を宣言。中国政府の救済策が不十分と判断され、金融システム不安が拡大。
波及効果:
- 鉄鉱石価格が▲20%(107ドル→85ドル)急落
- 豪ドル米ドルは0.6200まで下落(▲7%)
- 豪ドル円は98円まで下落(▲6%)
- S&P500は▲10%以上の急落
対策:
- 中国の信用市場指標(社債スプレッド、CDS)を週次でモニター
- 鉄鉱石価格が100ドルを割った時点で、豪ドルポジションの全量を見直し
- 危機発生時はゴールドと米国債へ資金を退避(豪ドルは全決済)
- 危機が沈静化した後(通常2〜4週間後)、0.6200〜0.6300ゾーンで再エントリー
テールリスク3: 米国の予想外の利上げ(確率5%)
シナリオ:
1月のCPIが予想を大幅に上回り(前年比+4.5%など)、インフレ再加速への懸念が台頭。FRBが緊急声明で「利下げの一時停止、場合によっては利上げ」を示唆。
波及効果:
- 米ドル指数(DXY)が105まで急騰
- 豪ドル米ドルは0.6350まで下落(▲5%)
- ただし、豪ドル円は金利差維持で102円台で踏みとどまる可能性
対策:
- このシナリオの確率は極めて低いため、積極的なヘッジは不要
- ただし、1月13日のCPI発表前には、ポジションサイズを通常の70%に削減
- CPI発表後、予想内(前年比+2.7〜3.1%)であれば即座に買い戻し
まとめ
今週の注目ポイント3つ
1. 豪ドル米ドルのトレンド転換を最優先で追う
2026年最初の週は、豪ドル米ドルが2021年以来の長期トレンド反転を確定させる可能性がある歴史的な局面です。ファンダメンタルズ(RBA vs FRBの政策乖離)、テクニカル(トレンドライン突破と200週MA試し)、イベント(弱い米雇用統計)の三要素が完璧に整列する機会は年に数回しかありません。
0.6620〜0.6640ゾーンでの押し目買いは、リスクリワード比1:3以上のプロフェッショナルグレードのセットアップです。今週トレードするなら、これが最優先です。
2. 地政学リスク(ベネズエラ)の月曜評価が全てを決める
週末に発生したベネズエラでの米軍事行動は、月曜日のアジア市場オープンで市場がどう反応するかが全てです。原油価格とVIX指数を最初の4時間で確認してください。
- 原油が63ドル以下で落ち着く → リスクオン継続、豪ドル買い継続
- 原油が68ドル突破 → リスクオフ警戒、豪ドル円ポジション縮小
- 原油が75ドル突破 → 全豪ドルポジション手仕舞い、ゴールド/円へ退避
地政学リスクは予測不能ですが、市場の初期反応は観測可能です。最初の4時間の価格形成を見てから動いても遅くありません。
3. 金曜日の米雇用統計が2026年の方向性を示す
12月NFPは、FRBの2026年政策パスを決定づける最重要指標です。予想+5.5万人に対して:
- +3万人以下: リセッション懸念→Fed追加利下げ期待→ドル急落→豪ドル0.68台へ
- +4〜7万人: 予想通り→トレンド継続→豪ドル0.6750目標
- +10万人超: サプライズ強さ→ドル反発→豪ドル調整(ただし構造的上昇トレンドは不変)
重要なのは、数字そのものだけでなく、内訳(民間セクター別、時給上昇率)と市場の解釈です。発表後30分はポジション調整を控え、市場コンセンサスが固まってから動くのも一つの賢明な戦略です。


