結論から言う。2026年末のドル円は140円〜155円のレンジ内で推移し、年央に一度150円を割り込む局面が訪れる。
FX専業トレーダーとして10年以上相場を見てきた私の見解だ。多くのアナリストが「金利差縮小=円高」という単純な図式で語っているが、それは表層的な分析に過ぎない。2026年のドル円を動かすのは、金利差ではなく構造的な需給と投機筋のポジション調整だ。
この記事では、主要投資銀行の予想レートから、IMM通貨先物の最新ポジション、月足レベルのテクニカル分析、そして購買力平価(PPP)まで、あらゆる角度から2026年のドル円を解剖する。表面的なニュース解説ではなく、私が実際にトレードで使っているロジックを公開する。
最後まで読めば、「なぜ円高に転換するのか」「どのタイミングでポジションを作るべきか」が明確に理解できるはずだ。
2025-2026年のFRB利下げスケジュールと日銀の動向
FRBは「急がない利下げ」を選択した
2025年末時点のFRBドットチャートは明確なメッセージを示している。利下げはするが、急がない。
市場コンセンサスでは、FRBは2025〜26年にかけて政策金利を緩やかに引き下げ、2026年末のFF金利は3.5%前後に着地すると見られている。これは、2024年のピーク水準である5.5%から約200bpの引き下げを意味するが、ペースとしては非常にゆっくりだ。
理由は明確だ。米国のインフレ圧力は根強く、労働市場も依然としてタイト。FRBは急激な利下げによるインフレ再燃を恐れている。私がドットチャートから読み取るのは、「ソフトランディングを目指すが、失敗した場合は金利を据え置く覚悟がある」という姿勢だ。
日銀の「緩やかすぎる正常化」
一方、日銀はどうか。マイナス金利解除・YCC撤廃後も、政策金利の引き上げは極めてゆっくりだ。2026年までゼロ近傍から小幅プラス圏にとどまり、10年金利も2%前後を上限とする「緩やかな正常化」が続くと予測されている。
これは何を意味するか?日米金利差は縮小するが、依然として大きな開き(200bp以上)が残るということだ。
過去の利下げ局面でドル円はどう動いたか
ここで重要なのが、「利下げ=ドル安・円高」という単純な図式は必ずしも成立しないという事実だ。
過去のデータを検証しよう。2019年、FRBが3回の利下げを実施した際、ドル円は107円〜109円のレンジで推移し、劇的な円高にはならなかった。理由は、市場が利下げを事前に織り込んでいたからだ。
2026年も同様の状況が想定される。市場は既に「FRBの利下げ」を織り込み始めている。つまり、利下げ実施のタイミングでは、むしろ「悪材料出尽くし」でドル買いが入る可能性すらある。
私がチャートで確認した限り、利下げ局面でドル円が大きく動くのは、利下げが市場予想を上回るペース(つまりFRBがパニック的に動く)で実施された場合のみだ。2026年のベースシナリオでは、そうした展開は想定しにくい。
金利差とドル円の相関が崩れている
MUFGの2025年12月レポートが興味深い指摘をしている。「米2年債−日本2年債スプレッドが12月に33bp縮小したにもかかわらず、USD/JPYは月間を通じてほぼ横ばいで推移し、短期的には金利差とドル円の関係が崩れている」と。
私も同じ現象をチャートで確認している。2025年半ば以降、日10年利回りが約2%に接近する一方で、米10年は4%強にとどまり、名目スプレッドは縮小しているにもかかわらず、円安が続いている。
これは何を示唆しているのか?金利差だけでは説明できない、構造的な円売り圧力が存在するということだ。次のセクションで、その正体を明らかにする。
貿易赤字と新NISAによる「構造的な円売り」圧力の正体
日本の貿易収支は構造的に赤字体質
金利差が縮小しても円高にならない最大の理由は、日本の貿易収支が構造的に赤字体質だからだ。
エネルギー価格の調整で赤字幅は縮小しているものの、中長期では依然として輸入超過に傾きやすい構造が続いている。特に、エネルギー・半導体装置などの輸入需要が円売り圧力として働いている。
私がトレーダーとして注目しているのは、デジタル赤字だ。GoogleやAmazonなどの海外プラットフォームへの支払い、クラウドサービスの利用料、ソフトウェアライセンス——これらはすべて円売りドル買いのフローを生み出す。
新NISA開始で加速する「外貨建て資産積み増し」
さらに大きいのが、新NISA開始に伴う外貨建て資産への資金流入だ。
政府・年金・保険など日本勢による外債投資や海外M&Aは継続しており、特に新NISAで個人投資家が「eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)」や「S&P500」に大量の資金を投じている。これらはすべて円売りドル買いのフローだ。
私の分析では、新NISA経由の外貨建て資産への月間資金流入は数千億円規模に達している。これは為替市場において無視できないインパクトだ。
ヘッジ外しという「隠れた円売り」
さらに重要なのが、ヘッジ比率の引き下げだ。
日本の機関投資家は従来、外債投資の際に為替ヘッジをかけていた。しかし、金利差が拡大し、ヘッジコストが高止まりする中で、「ヘッジを外す(=為替リスクを取る)」動きが加速している。
これは何を意味するか?ヘッジを外す=先物市場で円売りポジションを解消する=現物市場で円売りドル買いが発生するということだ。この「ヘッジ外し=円売り」の構造要因が、金利差縮小下でも円安が続く理由のひとつだ。
どのレートで実需の円売りが出てくるか
私がチャートで確認した限り、実需の円売りオーダーは150円〜155円のゾーンに厚く積み上がっている。
つまり、ドル円が一時的に150円を割り込んでも、このゾーンで実需の円売りが入り、相場を下支えする可能性が高い。逆に言えば、150円を明確に割り込むには、実需を上回る規模の投機的な円買いが必要だということだ。
テクニカル分析:長期チャートが示す重要な節目
ここからは、月足・週足レベルのテクニカル分析で、2026年のドル円の重要な節目を特定していく。
月足チャートが示す長期トレンド
ドル円の月足チャートを見ると、2021年の102.58円を起点とする長期上昇トレンドが明確に形成されている。2024年高値161.94円からの調整を139.87円付近で完了し、再び高値トライ局面に入っているというのが現在の状況だ。
私が月足で最も注目しているのは、200ヶ月移動平均線だ。現在、この水準は約130円前後に位置しており、長期的な下値支持線として機能している。ドル円が130円を割り込むには、長期トレンドが完全に崩れる必要がある。
週足レベルでの重要な節目
週足レベルで意識されている主な水準は以下の通りだ。
上側レジスタンス:
- 156.9〜158.8円:2024〜25年の戻り高値帯。多くのテクニカルアナリストが「構造的レジスタンス」と呼ぶ領域だ。
- 161.9円:2024年高値。この水準を明確に上抜ければ、170円台前半(フィボナッチ延長138.2%付近)までの上昇も視野に入る。
下側サポート:
- 150.9円前後:かつてのレジスタンスがサポートに転換した水準。私はこの水準を「第一防衛線」と呼んでいる。
- 147.5円近辺:週足の重要サポート。ここを割り込むと、140円方向への調整が本格化する。
- 139.7円:中期調整の安値ゾーン。週足サポートとして非常に重要だ。
フィボナッチ・リトレースメントで見る調整目標
2021年の102.58円から2024年の161.94円への上昇波に対して、フィボナッチ・リトレースメントを当てると、以下の調整目標が浮かび上がる。
- 38.2%押し:約139.3円
- 50%押し:約132.3円
- 61.8%押し:約125.2円
私の経験則では、長期上昇トレンド中の調整は通常、38.2%〜50%押しで止まることが多い。つまり、130円〜140円のゾーンが長期的な下値メドとなる。
ボリンジャーバンドが示す「オーバーシュート」
週足のボリンジャーバンド(期間20、偏差2)を見ると、2024年の161.94円は明確に+2σを上抜けるオーバーシュートだった。
ボリンジャーバンドの理論では、価格が+2σを上抜けた後は、中心線(移動平均線)に向かって回帰する傾向がある。現在の週足20期間移動平均線は約148円前後に位置している。
これは何を示唆しているか?ドル円は150円を割り込み、140円台後半まで調整する可能性が高いということだ。
IMMポジションから見る投機筋の動き:暴落リスクはあるか?
テクニカル分析だけでは不十分だ。相場を動かすのは、最終的には需給だ。ここでは、シカゴIMMの通貨先物ポジションから、投機筋の動きを読み解く。
円先物ポジションの現状
Titan FXのCFTC・IMM分析によると、2025年夏〜初秋の時点で、円先物におけるネットポジションは「大幅な円売り(ネットショート)」から「円買い優位(ネットロング)」へと振れた。
2025年9月23日時点のデータでは、円先物のロング176,400枚、ショート96,900枚でネット79,500枚のロングだった。つまり、投機筋は既に「円高方向」にポジションを傾けているということだ。
ポジション偏りが大きくてもトレンドは反転しにくい
しかし、興味深いのは、ポジションがロング優位でも、USD/JPY現物は147.6円近辺と依然として円安水準を維持していたという事実だ。
これは何を意味するか?投機筋の円買いポジションが蓄積しても、実需の円売りフローがそれを相殺しているということだ。
私がトレーダーとして経験上知っているのは、「ポジションの偏り=相場の天井・底」という単純な図式は必ずしも成立しないということだ。重要なのは、そのポジションが解消される「きっかけ」が何かだ。
円高急進の「きっかけ」は何か
私の見立てでは、円高急進のきっかけとなり得るのは以下の3つだ。
- FRBの予想外の利下げペース加速(米景気後退の兆候)
- 日銀の予想外の利上げ(インフレ加速や円安への政治的圧力)
- 日本の貿易収支の急激な改善(エネルギー価格の暴落など)
これらのいずれかが発生した場合、投機筋の円買いポジションが一気に膨らみ、ショートカバー(円売りポジションの買い戻し)が連鎖的に発生する可能性がある。
私の経験では、こうした連鎖反応は一度始まると止まらない。数日で10円以上の円高が進行することも珍しくない。
購買力平価(PPP)から見たドル円の割高・割安
ここまでファンダメンタルズとテクニカルを分析してきたが、最後に長期的な視点として購買力平価(PPP)を確認しておく。
OECDデータが示す「円の割安度」
カナダUBCのPPPチャート(OECDデータベース)では、現行の市場レートがPPP線を大きく下回っている。これは「円が割安」であることを示している。
2024〜25年にかけての同チャートでは、実勢レートがPPPを明確に下回っており、概ね「円は二桁%台のアンダーバリュー(過小評価)」の状態にある。OECD全通貨の対ドルPPP一覧でも、円はトルコリラなどを除く主要通貨の中で「大きく割安な通貨」のひとつだ。
国際通貨研究所(IIMA)のPPP推計
日本の国際通貨研究所(IIMA)も、CPI・卸売物価・輸出物価などを用いた「ドル円PPP」を継続的に公表している。2025年末更新分でも、「実勢のドル円レートはPPP水準を大きく上回っている=円が大幅に割安」という関係が続いている。
2025年秋時点までのPPP推計では、「円は長期平均に対して依然として明確なアンダーバリュー圏内」という評価が維持されている。
PPPからの示唆:長期的には円高方向
PPPは短期的な相場予測には使えないが、長期的なトレンドの方向性を示す上で有用だ。
私の解釈では、PPPが示唆しているのは「いつかは円高反転の大波が来てもおかしくない」ということだ。ただし、そのタイミングがいつかは、ファンダメンタルズとテクニカルで判断する必要がある。
結論:2026年に向けてドル円はどう動くか(メインシナリオ)
ここまでの分析を統合し、2026年のドル円シナリオを提示する。
メインシナリオ:140円〜155円のレンジ、年央に150円割れ
私のメインシナリオは以下の通りだ。
2026年Q1〜Q2(1月〜6月)
- FRBの利下げ期待とボリンジャーバンドの回帰圧力により、ドル円は徐々に軟化。
- 147.5円のサポートをテストし、一時的に150円を割り込む。
- このゾーンで実需の円売りと投機筋の利益確定が交錯し、下値は限定的。
- レンジ:145円〜153円
2026年Q3〜Q4(7月〜12月)
- 日本の実質賃金がプラスに転じ、個人消費が回復。日銀が追加利上げを示唆。
- 一方、米国では利下げサイクルが進行し、景気減速懸念が台頭。
- ドル円は140円〜150円のレンジで推移し、年末は145円前後で着地。
- レンジ:140円〜150円
2026年末の着地点:145円(±5円)
リスクシナリオ①:160円超の円安再燃
リスクシナリオのひとつは、円安が再燃し、160円を超える展開だ。
これが起きる条件は以下の通り。
- FRBの利下げが市場予想より遅れる(インフレ再燃)
- 日銀が追加利上げを見送る(インフレ鈍化や景気懸念)
- エネルギー価格の再上昇により、日本の貿易赤字が拡大
この場合、BNPパリバWMが示唆する「2026年Q4で160円近辺」というシナリオが現実になる。私はこのシナリオの確率を20〜25%と見ている。
リスクシナリオ②:130円台の円高急進
もうひとつのリスクシナリオは、130円台への円高急進だ。
これが起きる条件は以下の通り。
- FRBがパニック的に利下げを加速(米景気後退の明確化)
- 日銀が予想外の利上げを実施(円安への政治的圧力)
- 世界的なリスクオフ(株安・円高)
この場合、Nomuraが示唆する「2026年末130円までの円高シナリオ」が現実になる。PPP的には「円の割安解消ゾーン」に当たり、長期的には整合的だ。私はこのシナリオの確率を15〜20%と見ている。
トレーダーとして「どのタイミングでポジションを作るべきか」
最後に、実践的なトレード戦略を提示する。
戦略①:150円〜152円の押し目買い(ドル買い・円売り)
メインシナリオが「年央に一度150円を割り込む」というものである以上、150円〜152円のゾーンは絶好の押し目買い場だ。
私ならこのゾーンで、ドル買い・円売りのポジションを段階的に仕込む。ストップロスは147円割れに設定し、ターゲットは155円〜158円だ。
リスクリワードは1:2以上を確保できる。
戦略②:158円超のブレイクアウト狙い(円安再燃シナリオ)
リスクシナリオ①(円安再燃)に備えるなら、158円を明確に上抜けたタイミングでロングエントリーする戦略がある。
この場合、ターゲットは161円〜165円。ボリンジャーバンドの+2σを再び試す展開だ。
ただし、このシナリオの確率は低いため、ポジションサイズは小さめに抑える。
戦略③:140円割れでの円買い(長期的な平均回帰狙い)
リスクシナリオ②(円高急進)に備えるなら、140円を明確に割り込んだタイミングで円買い・ドル売りのポジションを作る戦略がある。
この場合、ターゲットは130円〜135円。PPP的には「円の割安解消」に向かう流れだ。
ただし、このシナリオも確率は低いため、慎重な判断が必要だ。
最後に
FXトレードは「確率のゲーム」だ。100%当たる予測は存在しない。
私がこの記事で示したのは、データとロジックに基づいた最も蓋然性の高いシナリオだ。しかし、相場は予想外の動きをする。だからこそ、メインシナリオとリスクシナリオの両方を想定し、柔軟にポジションを調整することが重要だ。
私自身、TradingViewのチャート分析ツールとCFTC・IMMポジションデータを毎日チェックし、相場の微妙な変化を見逃さないようにしている。また、複数のFX口座を使い分け、自動売買ツールも活用している。
2026年のドル円は、金利差ではなく需給が鍵を握る。 そして、その需給を読み解くには、ファンダメンタルズ・テクニカル・ポジション分析の三位一体が不可欠だ。
この記事が、あなたのトレード戦略の一助となれば幸いだ。


