ゴールド(金)価格は歴史的な高値圏で推移しています。XAUUSD(ドル建て金価格)は4,471ドル近辺、円建て金価格は24,812円/gと、前日比でそれぞれ+0.47%〜+0.50%の上昇を記録しています。
週明けの取引は「窓開け(ギャップアップ)」からスタートし、その後も押し目が浅い展開が続いています。これは週末に発生したベネズエラでの地政学イベント(マドゥロ大統領拘束)を受けた強烈な買い圧力と、ショートカバー(空売りの買い戻し)が複合的に作用している証拠です。
田中貴金属工業の公表価格では、小売価格が24,812円/g(前日比+321円)、買取価格が24,566円/g(前日比+322円)となっており、国内市場でも強い需要が確認できます。
今日の値動きのポイント:
- 高値圏での保ち合い(コンソリデーション)が継続中
- 利食い売りを吸収する新規買いオーダーが途切れていない
- ドル円が156円台で底堅く推移し、円建て価格を押し上げている
金価格上昇の背景:ベネズエラ情勢と地政学リスク
今回の急騰を引き起こした最大の要因は、1月3〜4日の週末に発生した米軍によるベネズエラでの軍事作戦とマドゥロ大統領の拘束という、冷戦終結後でも稀に見る地政学的サプライズです。
この「ブラックスワン」級のイベントは、金市場に3つの経路で影響を与えています。
直接的な安全資産需要(有事の金買い):
主権国家の指導者を他国の軍隊が直接拘束するという事態は、国際法秩序の不確実性を極限まで高めます。南米諸国のみならず、中東やアジアの反米諸国との緊張激化が懸念され、無国籍通貨である金への逃避資金流入が加速しました。
エネルギー市場を経由したインフレ連想:
ベネズエラは世界最大級の原油埋蔵量を持つ国です。短期的には混乱による供給途絶リスクが意識され、特にベネズエラ産の重質油は米国の製油所にとって代替が難しい資源であるため、ガソリン価格の上昇を通じて米国のインフレ率を押し上げるリスクがあります。インフレ再燃懸念は、インフレヘッジとしての金の魅力を高める要因となっています。
脱ドル・金シフトの加速:
米国の強硬な外交・軍事行動は、ドル決済システムへの依存リスクを再認識させます。これにより、新興国中央銀行による「脱ドル・金シフト」の動きが2026年も構造的に継続・加速する可能性が高まっています。
金チャート分析:パーフェクトオーダー発生で強気継続

テクニカル面から見ると、現在の金相場は「成熟した上昇トレンド」の様相を呈しています。
移動平均線はパーフェクトオーダー形成:
短期(5日/20日)、中期(50日)、長期(100日/200日)のすべての移動平均線が上向きであり、かつ価格がそれらすべての上に位置する「パーフェクトオーダー」の形状を示しています。これは長期的な強気相場を裏付ける強力なシグナルです。
特に200日移動平均線(4,425ドル付近)との乖離が広がっており、トレンドの力強さが確認できます。4時間足における100期間移動平均線は、押し目のサポートとして機能しており、トレーダーにとっての動的な防衛ラインとなっています。
オシレーター指標は強気を示唆:
- RSI(14日):64.52付近で推移。70の買われすぎラインには達しておらず、まだ上昇余地を残している状態です
- MACD:MACDラインがシグナルラインを上回る「ゴールデンクロス」状態が継続中。ヒストグラムもプラス圏で拡大しており、上昇トレンドの加速を示しています
- ストキャスティクス:78付近と高水準ですが、強いトレンドでは高止まりが続くことが常であり、現時点での反転シグナルは確認されていません
重要なサポート・レジスタンスライン:
- 第1レジスタンス:4,500〜4,510ドル(心理的節目、ブレイクで加速の可能性)
- 現在値/直近高値:4,472ドル(短期的な攻防の分岐点)
- 第1サポート:4,430〜4,437ドル(直近の需要帯、押し目買いゾーン)
- 重要サポート:4,400ドル(心理的節目、ここを割ると短期トレンドが中立化)
- 最終防衛ライン:4,306ドル(1月2日の安値、上昇トレンドの継続性を担保する最重要ボトム)
円建て金価格 今後の見通し:25,000円到達の可能性
円建て金価格は、XAUUSDの上昇とドル円の底堅さが相乗効果を生み出し、グラム単価24,800円台という未踏の領域で推移しています。
為替の増幅効果が円建て価格を押し上げ:
通常、地政学リスクが高まると「有事の円買い」が発生し、円高が進行することで円建て金価格の上昇は抑制される傾向があります。しかし今回は、米国の軍事行動による「強いドル」の側面や、日米金利差の絶対的な開きが意識され、円高進行が限定的です。
1月6日時点でのドル円レートは156.31円近辺で推移しており、これにより国内金価格は国際価格の上昇をほぼダイレクト、あるいは為替差益込みで享受する形となっています。
25,000円到達のシナリオ:
XAUUSDが4,500ドルをブレイクし、4,550〜4,600ドルのゾーンへ上昇する場合、ドル円が155円以上を維持すれば、グラム単価は25,200円〜25,500円を目指す展開となります。これは現在の価格から約400〜700円の上昇幅であり、決して非現実的な水準ではありません。
国内需給の逼迫も追い風に:
国内のリテール投資家の「持たざるリスク」が刺激され、店頭での買い需要が喚起されている可能性があります。過去に購入した保有者には莫大な含み益が発生しており、これが利益確定売りを誘発する一方で、さらなる上昇期待から売り惜しみが発生し、需給が引き締まる要因ともなっています。
明日の金価格予想:注目はISM非製造業景況指数
今夜24時(日本時間)に発表される米ISM非製造業景況指数が、明日の金価格を左右する重要なイベントとなります。
5-1. シナリオA:4,500ドル突破の強気ケース(確率45%)
成立条件:
- ISM非製造業景況指数が予想(52.5)を下回り、米経済の減速懸念が台頭する
- ベネズエラ情勢が泥沼化し、他国(イラン等)が関与を示唆するなどリスクが拡大する
- ドル円が155円以上を維持し、円建て価格への追い風が続く
プライスアクション:
4,472ドルの直近高値を大陽線でブレイクし、ショート勢のストップロス(踏み上げ)を巻き込んで、4,500ドルの心理的壁を一気に突破。4,550〜4,600ドルの真空地帯へ突入する展開です。
円建て価格:
グラム単価25,200円〜25,500円を目指す可能性があります。
トレード戦略:
4,440ドル付近での押し目があれば、ロングエントリーのチャンス。ストップロスは4,400ドル割れに設定し、ターゲットは4,500ドル、最終的には4,550ドルを目指します。
5-2. シナリオB:4,430ドル付近への調整ケース(確率40%)
成立条件:
- ISM非製造業景況指数が予想通りか若干上回り、経済指標がミックス(強弱まちまち)となる
- ベネズエラ情勢に関する新規材料が出尽くし、市場が「事実」を消化するフェーズに入る
- FRBの政策方針に決定的な変化が見込めない
プライスアクション:
4,500ドル手前での利益確定売りと、4,430ドル付近での押し目買いが拮抗。RSIの過熱感を冷ますための「時間調整」が入り、4,400〜4,500ドルのレンジで高値保ち合いとなります。
トレード戦略:
レンジトレード(逆張り)が有効な局面です。4,400ドル台前半でのロング、4,480ドル近辺での慎重な利食いを検討します。ただし、地政学リスクが突発的に拡大する可能性があるため、ポジションサイズは控えめに。
今週の注目イベントと中期見通し
今週は地政学的ヘッドラインと経済指標の双方が市場を揺さぶる「高ボラティリティ週間」となることが予想されます。
今週の重要イベント:
- 1月7日(水)22:15:米ADP雇用統計(週末のNFPの前哨戦)
- 1月8日(木)24:00:米ISM非製造業景況指数(予想52.5/前回52.1)
- 1月8日(木)22:30:米新規失業保険申請件数(リアルタイムの雇用情勢)
- 1月9日(金)22:30:米雇用統計(NFP)— 今週最大のイベント
マクロ要因と金価格の関係性:
地政学リスクとFRB内の政策対立が、2026年の金相場を押し上げる構造的要因となっています。
2025年12月のFOMCでは利下げが実施されたものの、9対3という異例の反対票が出ており、FRB内部でも「インフレは本当に鎮静化したのか?」という点について確信が持てていない状況です。ベネズエラ情勢による原油高がインフレを刺激すれば、FRBは利下げペースを減速せざるを得なくなる可能性があります。
通常、高金利の維持は金利を生まない金にとってネガティブですが、現在は「インフレ制御不能リスク」へのヘッジ需要が金利のマイナス要因を上回っている状態です。地政学リスクにより名目国債利回りが低下する一方で、インフレ期待が高止まりすれば、実質金利は低下し、金価格にとって最も強力な追い風となります。
週足チャートのトレンド:
週足レベルでは、明確な上昇トレンドが継続中です。高値・安値の切り上げパターンが維持されており、中長期的な強気相場が裏付けられています。ただし、200日移動平均線との乖離が広がっているため、どこかのタイミングで平均回帰(調整)の圧力が顕在化する可能性には警戒が必要です。
具体的なトレード戦略例
デイトレード戦略①:押し目買い狙い
エントリー条件:
4,430〜4,440ドルのサポートゾーンまで一時的な調整が入った場合、下ヒゲの出現や5分足での反転パターン(ダブルボトムなど)を確認してロングエントリー。
ストップロス:
4,400ドル割れ(約30〜40ドルの損切り幅)
利確ターゲット:
第1ターゲット:4,472ドル(直近高値)
第2ターゲット:4,500ドル(心理的節目)
リスクリワード比:
1:2以上を確保
デイトレード戦略②:ブレイクアウト狙い
エントリー条件:
4,472ドルの直近高値を明確にブレイクし、5分足で実体を伴った陽線が確定した場合、リテスト(一時的な押し目)を待ってロングエントリー。
ストップロス:
4,450ドル割れ(ブレイク失敗の可能性を考慮)
利確ターゲット:
第1ターゲット:4,500ドル
第2ターゲット:4,550ドル
スイングトレード戦略:中期上昇トレンドへの順張り
エントリー条件:
4,400〜4,430ドルのゾーンでの押し目を狙い、日足レベルでの反転シグナル(下ヒゲの長い陽線など)を確認してロングエントリー。
ストップロス:
4,306ドル割れ(1月2日の安値、上昇トレンドの最終防衛ライン)
利確ターゲット:
第1ターゲット:4,550ドル
第2ターゲット:4,600ドル
保有期間:
数日〜1週間程度
ポジション管理:
週末やNYクローズ間際のポジション持ち越しは、地政学イベントの突発リスクを考慮し、通常よりもロットを落とすか、一部利食いを検討します。
円建て金の戦略
歴史的高値圏にありますが、ドル円の底堅さが続く限り、円建て金の上昇トレンドは崩れにくい状況です。
長期保有分:
インフレヘッジとしての長期保有分は維持。
短期売買分:
25,000円近辺での一部利食いも検討に値します。24,500円付近での押し目があれば、追加の買いポジション検討も。
リスクと注意点
地政学イベントの突発リスク:
ベネズエラ情勢の続報や、中国・ロシア・イラン等の反応次第では、リスクオフがさらに加速する可能性があります。具体的な対抗措置(報復)が発表されれば、金価格は一段高となる可能性がある一方で、劇的な早期解決に向かう場合はリスクプレミアムが剥落し、急落のリスクもあります。
重要なボラティリティイベント前後の注意点:
今週は雇用統計(NFP)をはじめ、重要指標が目白押しです。指標発表前後の30分〜1時間はスプレッドが拡大し、急激な値動きが発生しやすいため、エントリータイミングには細心の注意が必要です。
レバレッジ管理と損切りの重要性:
高ボラティリティ環境では、想定外の値動きが発生するリスクが高まります。レバレッジは通常の半分程度に抑え、必ずストップロスを設定してください。「損小利大」の原則を徹底し、一度の取引で資金の2%以上を失わないよう資金管理を厳守しましょう。
ドル円との相関に注意:
現在は「ドル高・金高」という異例の状態ですが、通常はドル高は金安要因となります。ドル円が急激に円高方向へ振れた場合、円建て金価格は国際価格の上昇を打ち消す形で調整する可能性があります。
FRB高官発言のサプライズ:
今週はFRB高官の発言も予定されています。極めてタカ派的な発言があれば、利下げ期待が後退し、短期的に金価格が調整する可能性があります。
免責事項:
本記事は2026年1月6日時点の市場情報に基づいた個人の見解であり、将来の値動きを保証するものではありません。金融商品取引には元本損失のリスクが伴います。投資判断はご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。また、本記事は投資助言や勧誘を目的とするものではありません。


